佐瀬雅行写真展に向けて

川原毛地獄(秋田県湯沢市)

絶え間なく噴出する火山ガス(硫化水素)で山肌は灰白色に漂白され、草木もほとんど生えていない。JR湯沢駅から車で約45分、標高800mの山中に荒涼とした不気味な風景が広がる。大同2(807)年に月窓和尚が開山したと伝えられ、恐山、立山(富山県)と並ぶ日本三大霊地の一つともいわれている。江戸期から昭和40年代まで硫黄の採掘が行われていた。近くには、湧出した温泉が20mの高さから流れ落ちる川原毛大湯滝がある。

  • 灰白色の世界に足を踏み入れると、夢と現実のはざまに身を置いているような感覚に襲われる

そこは、一面が白い砂礫に覆われている、色彩の失われた「異界」だった

秋田県南部に位置する湯沢市の中心部から国道13号を南下し、県道に入って岩手や宮城との県境方面に向かう。田園地帯を通る快適な道は、やがて三途川渓谷を過ぎた辺りから細い山道に変わった。カーブの連続に苦労しながら車を走らせ、秘湯で知られる泥湯温泉からさらに登って、ようやく川原毛地獄に到着した。

そこは色彩の失われた「異界」だった。一面が白い砂礫に覆われていて、油断すると足を取られる。強い異臭が漂い、前方の丘に続く道は「危険・立ち入り禁止」の看板で遮られていた。撮影に訪れるのは3度目だが、この異様な景観を映像で再現するのは簡単ではない。

標高が高いためか、雲の流れが速い。まぶしいほどの光に溢れていたかと思うと、あっという間に暗雲に覆われてしまう。数少ない観光客を待ち続けて1時間。ようやくイメージ通りのカットを撮影することができた。

それにしても、今回のテーマで訪れた撮影地は辺鄙な場所が多い。徒歩に頼る以外に方法がなかった時代、人々が大変な苦労を重ねて霊山、霊場を目指したエネルギーはどこから生まれてきたのだろうか。(2014年9月撮影)

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