佐瀬雅行写真展に向けて

川倉賽の河原地蔵尊(青森県五所川原市)

幼くして死んだ子どもの供養として石や木の地蔵を墓所などに奉納し、顔に化粧を施して衣装を着替えさせる津軽地方独特の地蔵信仰を代表する霊場。地蔵堂や境内には約2000体の地蔵が祀られている。旧暦6月22~24日の例大祭には多くの参詣客でにぎわい、イタコの口寄せも行われる。

  • 賽の河原に続く道端に晴着を着せられた石の地蔵がたたずむ

地蔵たちが語りかけてくるように思えて、死者の存在を身近に感じた

五所川原市から冬のストーブ列車で有名な津軽鉄道に揺られて約25分、無人駅の芦野公園駅で降りる。現在は五所川原市と合併したが、太宰治の故郷で知られる金木町だ。生家の「斜陽館」からも遠くない。太宰も幼い頃に、芦野公園で遊んだという。駅は公園の中にあり、元禄年間に津軽藩が感慨用に造った芦野湖(藤枝溜池)に沿って遊歩道が巡っている。公園内には太宰の文学碑が立っており、毎年6月19日に「桜桃忌」(現在は生誕祭)が行われるという。そばには太宰が見たら気恥ずかしく思うようなマント姿の銅像もある。大まかな見当をつけて吊り橋や浮き橋を渡り、川倉賽の河原地蔵尊を目指した。

歩くこと30分、迷ってしまったのかと疑い始めた頃、ようやく地蔵尊の山門が見えてきた。正面の地蔵堂に入ると、本尊を取り囲むように無数の地蔵が並んでいる。あまりの迫力に息苦しさを覚えて、湖畔の賽の河原に続く坂道を下ると、あちこちに石の地蔵がたたずんでいる。質素な木造の祠に納められた地蔵もある。どれもが晴着を着せられて、うっすらと化粧を施されたものもある。一体一体の地蔵と向き合い撮影を続けるうちに、いつまでも死者と寄り添い弔い続ける人々の思いが心に迫ってきた。

例大祭には近在からの参詣客で込み合うというが、誰とも出会わない。あきらかに日常とは異なる世界に足を踏み入れている感覚がするけれど、恐れよりも不思議な懐かしささえ覚える。地蔵たちが語りかけてくるように思えて、死者の存在を身近に感じた。(2012年5月撮影)

 

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