写真展に向けて追加撮影と撮り直しをしようと思い立った。不順な天候の合間を縫って、愛車に機材を積み込み、9月1日から1泊2日の撮影行に出発した。

1日目の目的地は、柳田國男の『遠野物語』の舞台として知られる岩手県遠野市。最初に『遠野物語』の話し手、佐々木喜善の生家に近いデンデラ野に向かった。60歳を過ぎた老人が自給自足の生活を送りながら死を待ったという「姥捨て」の場所だ。以前、取材で訪れて不思議な感覚にとらわれた記憶がある。だが、今回は季節や天候の関係かもしれないが、夏草に覆われた狭い丘にしか見えなかった。イメージしていた光景とは異なり肩すかしだった。

次に綾織地区の続石に向かった。二つ並んだ石の片方に幅7メートル、奥行5メートル、厚さ2メートルほどの巨石が置かれている。太陽が傾いて薄暗くなるまで3時間以上もこの奇岩と向き合っていたが、見れば見るほど自然の造形物とは思えない。『遠野物語拾遺』に出てくる武蔵坊弁慶が作ったという伝説はともかく、古代の支石墓(ドルメン)のような人為的なものと感じた。

翌日は遠野のホテルを早朝に出発、花巻市東和町の丹内山神社を目指した。本殿裏手の斜面に巨大な磐座が鎮座している。アラハバキ大神の巨石で奥州藤原氏も信仰したという。それにしても岩手県には、県名の由来となった盛岡市の三ツ石をはじめ信仰の対象となっている巨石奇岩が多いのはなぜだろう。

撮影行の最後は秋田県湯沢市の川原毛地獄。東北道と秋田道を経由して湯沢市に入り、カーブが連続する細い山道の先に荒涼とした地獄が見えてくる。これまで撮影で2度訪れているが、勢いよく吹き出す酸性火山ガスで白茶けた山肌が広がる風景を満足に再現できなかった。理想的な光線状態と雲の下で点景となる見物客を待つこと1時間、ようやくイメージ通りの1枚を撮ることができた。